エムベアレス 第1章.プロローグ

俺の名は、堀越銀次朗。
年は50を過ぎてから、数えるのを止めた。

職業は、映像制作会社の社長。
と、言っても、今はアダルトビデオ専門だが。

「信用第一」をモットーにやってきたお陰で業界内の評判も良いと聞く。
経営もすこぶる順調と言ってよい。

元は役者をしていた。
堀越銀次朗という名も、その頃の芸名だ。
時代劇とか子供向けの戦隊ものなら、テレビに出たこともある。
悪役とか斬られ役ばかりだったが。

その内、演じる側から作り手に回りたくなり、映像制作会社を立ち上げた。
だが、なかなか大きな仕事にはありつけず、食っていくためにアダルト業界に進出。

後発組なので、マニアックな企画モノを中心に据えたところ、これが当たって着実に売上を伸ばすことができた。
インターネットが普及してからは、ネット配信も始め、こちらは高画質と女優の質で勝負した所、これまた大当たり。

お陰で、長い間、日の目を見なかった俺の人生にも、ようやくお天道様が回ってきた感じだ。

今の仕事を始めてから気付いたことがある。
人は、いろんな性癖(フェチ)を持っているということを。

俺自身、人には言えない性癖を持っている。
女房にも、今の仕事を始めるまでは内緒にしていたくらいだ。

仕事もスタッフに任せられるようになり、時間と金に余裕ができた俺は、自分の性的嗜好を表現する場が欲しくなった。

そこで俺は同じ趣味を持つ、とある会社の社長を誘い、共同出資で秘密倶楽部を作った。
自分の妄想を目の前で実演させて鑑賞し、また映像に残す。
それを厳選した少数の会員と共に楽しむ場として。

開催は不定期だ。
自分の食指が動いた女優と出会えた時しか行なわないので。

女優といっても、最近はプロの女優は使わない。
会員の目も肥えてきて、よりリアルなものを求められるようになったからだ。
つまりは素人にアドリブで実演させる形式が好まれている。

だから最近は自社でモデルの募集をかけている。
応募してきた女性の中から、これはと目を付けた女性に、秘密倶楽部の仕事を紹介することにしているのだ。

そうした素人をいきなり舞台に上げ、素のリアクションを楽しもうという趣向だ。

さて、今日もそんな女性が一人、応募してきたらしい。
早速、面接してみるとするか・・・

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