第10章 お仕置きされる少女

「それでと・・、自分のした事がわかったのか?」

「はい・・・」

「声が小さい!!」

「はい。」と鼻をすすりながら涙声を出す少女。

「それで、どうわかったんだ。言ってみなさい。」

少女は鼻をすすりながら、
「万引きは・・・泥棒です・・・とっても悪い事です・・・私たちが万引きしたら・・・会社がつぶれます・・・物の値段が上がります・・・不景気になります・・・悪い人間になってしまいます・・・悪い大人になったら、また悪い子供ができます・・・」

「そうだ。」
「悪い事をしたら結局、自分に返ってくるんだ。」
「万引きとはどういう事か、何故おじさんが万引きを憎んでいるか、わかったな。」

「はい・・・」

由香里は耳が痛かった。
自分は大人で、しかも教師なのだから・・・。

「君は家(うち)の子と同級生だし、おじさんも警察に突き出すのは忍びない。」
「だから、今日の事は警察には言わない。」

「だけど、学校には報告する。」
「おじさんは、四葉のPTA会長だからな。」
「学校に報告する義務がある。」

少女は項垂れていた顔を上げ、
「それは、困ります・・」
「退学になっちゃいます・・」と哀願する。

「悪い事をしたら、ちゃんと罰を受けなければならない。」
「それに罰を受けないというのは、不幸な事でもあるんだ。」

「だが、退学というのは教育の放棄だからな。」
「大人が責任を放棄して、子供に押しつけるようなものだ。」
「おじさんは、そういうのは違うと思う。」
「だから、君を退学にさせたりはしない。」
「高等部への進学も支障が無い様に話をしておいてあげるから心配しなくてもいい。」

「それに学校に報告すると言っても阿部先生にだけだ。」
「あの先生なら、きつく叱られるかもしれないが、自分一人の胸に納めてくれる筈だ。」

由香里は意外な人物の名が出てきて、怪訝に思った。
(あの阿部先生がそんなに穏便にすませてくれるかなあ?)
(それにしても、多胡さんと阿部先生って、そんなに信頼しあう仲だったの?)

(でも、多胡さんて意外と融通を利かせてくれる人みたい。)
(私にも、お情けをかけてくれないかな・・・)
と淡く期待した由香里の気持ちを、多胡はすぐに奈落の底へと突き落とした。

「そのかわり、悪い事をした子供のお仕置きはするからな。」
「万引きした罰として、おじさんが、お尻ぺんぺんしてやる。」

由香里は、自分に対して言われた言葉でもないのに顔が熱くなり、心臓が高鳴った。

「えっ!?・・で・でも・・」
と少女は戸惑いの声をあげた。

逆らえない事は分かっていながらも、抗議の色を控え目に滲ませている。

「おじさん家(ち)のお仕置きは、上の娘なんか高校生になるけど、いまだにお尻ぺんぺんだ。」
「もし、こんな悪さをしようものなら、それこそ百叩きさ。」
「プラス、会社の便所掃除一ヶ月。」
「お小遣いは向こう半年間無しってとこかな。」

この言葉を聞いた由香里は
(多胡さんの娘でなくてよかった・・・)
と多胡家の娘達に同情した。

「おじさんも忙しいから、今日はお尻ぺんぺん10回で勘弁してやる。立ちなさい。」
と多胡は少女に命じた。

少女はよろよろと立ち上がり、靴を履く。
多胡は机から離れると、近くに置いてあった丸椅子を引き寄せた。

「ここに、手をつきなさい。」
と多胡は少女に向かって、椅子の座面を指先で叩いてみせる。

「でも・・」
と少女は躊躇し、足が竦んだかの様に動かない。

「さあ、早くしなさい。」
「素直にしないと、パンツも下ろしてお仕置きするよ。」
と多胡は強い口調で少女を促した。

少女は仕方なく椅子の傍に寄ると、「そこに手をついて。」と多胡が重ねて命じる。

少女は命じられるまま、おずおずと椅子に手をついた。

「膝を伸ばして、ちゃんとお尻を突き出す。」
「お仕置きが終わるまで、その手を離したりしないように。」
「離したら最初からやり直しするからな。」
と多胡は厳しい口調で戒めた。

少女は水色でニット地のカーディガンを羽織り、グレーのプリーツミニのスカートを履いている。
白いブラウスを襟元に覗かせているのは見えたが、顔は髪が垂れて横顔を隠し、見えなかった。

少女からは、まだ一度も由香里達の姿を認めていないが、先程のやりとりで存在は意識していることだろう。

少女にしてみれば、誰とも知れない傍観者の前で尻高のポーズをとらされ、また中学三年生にもなってお尻ぺんぺんされる事になり、さぞや恥ずかしかろう。

由香里には、その恥ずかしさと屈辱感は我が身に起こっている出来事であるかのように想像できた。
なぜなら、自分も少女と同じ罪を犯して連れてこられて身であり、少女が受ける罰は正に人ごとではなかったから。

多胡が無造作に少女のスカートを捲った。
「あっ、やめてください。」と言って少女の膝が崩れる。

多胡は動じる風もなく、
「本来なら、パンツも下ろしてお仕置きするところだぞ。」
「甘ったれるのも、いいかげんにしろ。」
「誰の為にお仕置きしてやってると思っているんだ。」

「嫌なら、やめてもいいんだぞ。」
「そうなりゃさっきの約束もなしだ。」
「好きにしなさい。どっちにする?」
と少女をどやしつけた。

「・・・ごめんなさい・・・」
と少女は、声を絞り出した。

多胡は少し間をおいてから
「素直にお仕置きを受けられるか?」
と覚悟を決めろとばかりの口調で促した。

少女は、小さな声で「はい・・」と答える。

「なら、ちゃんと ”お仕置きをお願いします”と言いなさい。」
と多胡は変わらぬ厳しい口調で命じた。

「・・・おしおきを、おねがいします・・」
と少女は、鼻をすすりながら命令に従った。

「じゃあ、もう一度ちゃんと姿勢をとって。」
と多胡は少女に先程の姿勢をとらせ、再びスカートを捲る。

水色に白い縁が入った下着で、中学生のパンツにしては小さくて色っぽかった。

「手間をかけさせた罰として、2回増やして12回だ。」
「叩かれたら数を数えなさい。」
「わかったな。」

「・・はい・・」

「はい、ひとつ。」
と多胡は言って少女のお尻を下着の上から叩いた。
それほど強くはない。

「・・ひと・・っ・・」

「声が小さい。最初から。」
「はい、ひとつ。」
と多胡はさっきより、強めに叩いた。

「・・・ひと・つ・・」
と必死に声を出して数える少女。

「はい、ふたつ。」

「ふた・つ・・」

「はい、みっつ。」

「みっつ・・」

多胡は、徐々に力を強めて叩いた。
「はい、よっつ。」

「あっ・・・よ・・・」

「聞こえない。もう一度。よっつ。」
と少女のお尻を強く叩いた。

”バシーン”とお尻の音も一段と高鳴る。

「よ・・つ・・です・・」
と少女は、痛みに耐えながら声を絞り出した。
しかし、膝が折れお尻が逃げようとしている。

「はい、姿勢を正して。膝を伸ばす。」
と多胡は、大きな声で少女に命じる。

少女も命じられた姿勢をとろうとする意思は見えるのだが、体が言う事を聞かないらしい。

すると、多胡は左腕で少女を小脇に抱え上げた。
「あっ」と少女は短く叫ぶ。

さらに、スカートを捲って裾を少女のウエストに挟んで固定した。

白い靴下を履いた少女の脚は床を離れぶらぶらとし、頭は垂下がって顔に髪の毛が覆い被さり、手は宙を掴もうとして空しく蠢いていた。

これで、少女は多胡の打擲から完全に逃げる事が出来なくなったわけだ。

由香里はさらに過酷さを増す少女の責め苦を想像し、我が身に降りかかっている苦悶であるかの如く身悶えした。

多胡は、一切の憐憫の情も示さずに、無慈悲に打擲を再開する。
「はい、いつつ。」

「い・つ・つ・で・す・・・」
と少女は、お腹を押さえられているせいか苦しげに数える。

「むっつ。」と今度は強め。

「・む・・つ・で・す・・・」

「ななつ。」とやや叩き損ね。

「ならつ・・です・・」

「やっつ。」パシーンとジャストミート。

「や・・つ・で・・」

「ここのつ。」ピシャーンといい音。

「あっ・・こころつ・・・」

「はい、じゅう。」と一段と強い。

「・ず・・ずー・・です・・」

「じゅういち。」とやや軽め。

「じゅうりち・・・」

「はい、ラスト・・じゅうに。」
最後は手のひらを広げて、力強く右手を振り下ろすのが見えた。

「ずーり・・」
と少女は最後の力を振り絞ってカウントした。

多胡が少女を床に降ろした。

少女は、「うっ・・ううっ・・お・・おぅ・おっ・・」と嗚咽し、手で涙を拭っていた。

多胡からは、厳しい表情は消えていた。
机の上に置いてあったティッシュの函から2組のティッシュを取り出す。

「さあ、お仕置きは終わりだ。」
「泣かなくていい。これで、涙を拭いて。」
と言いながら、少女にティッシュを渡す。

少女はティッシュを受け取り、涙を拭いて軽く鼻もかんだ。

多胡は少女を自分の胸に抱き寄せると、
「これで、君の悪い心は叩きだした。」
「もう、良い子に戻ったんだから何も心配しなくていい。」
と少女の頭に顔を傾け、右手で髪を撫でながら優しく囁いた。

由香里は、少女をちょっぴり羨ましく思った。

「本来なら保護者の方に引き取りに来てもらう所だが、どうする?」と多胡は少女に尋ねる。

少女は、「できれば、親には内緒にして欲しいです・・」と答えた。

「よし、親御さんに無用の心配をさせる必要もないだろう。」と多胡は少女の要望を受け入れると、「佐藤さん、ちょっと。」と少し大きな声を出して佐藤を呼んだ。

佐藤も、これまでの出来事を息を止めて見守っていたのであろう。
急に名前を呼ばれ、金縛りが解けた様に慌てて、「はい」と立ち上がり、多胡の許へと歩み寄った。

「9階に医務室があるから、この子を連れて行って休ませて下さい。」
「しばらく、ベッドに寝かせてお尻を冷やしてあげるといい。」
「自宅には貧血とでも言って、”ただ念の為迎えに来て欲しい”と連絡して下さい。」

そこまで聞いていた少女が慌てたように口を挟む。
「あの、塾に行かなければならないので、一人で帰りたいんですけど・・」

多胡は少女の方へと振り返り、
「一人で大丈夫なのかい?」
「無理はするんじゃないよ。」
「今日位、休めないのかい?」と優しく尋ねた。

少女は、「はい、大丈夫です。一人で帰れます。」と即答する。

多胡は、「わかった。とにかく休んでから帰りなさい。わかったね。」と少女の肩に手を置いた。

「はい」と少女は頷く。

多胡は佐藤へと向き、
「じゃあ、医務室で手当して、しばらく休ませてくれますか。」
「落ち着いたら、帰していいです。」
「そうしたら又ここに戻ってきて下さい。」と伝えた。

佐藤は、「わかりました。」と言って由香里の方をチラリと振り向き、「では、これをお渡ししておきます。」と言いながら、手に持っていた書類一式を多胡へと預けた。

多胡は、「うむ」と短く答えて受け取り、机の上に置く。

佐藤は少女に、「じゃ、行きましょうか。」と声をかけ、出口へと促した。

少女は一旦、出口へと歩みかけたが、思い直した様に多胡の方へ振り向くと、「あの・・どうも、ありがとうございました。」とペコリと頭を下げた。

多胡も、「ああ、君は良い子だ。家の子とも仲良くしてやってくれ。気をつけて帰りなさい。」と声を掛ける。

佐藤が少女を伴って、ソファに座っている由香里の前へと近づいてきた。
少女はお尻が痛むのか、手で控えめにお尻をさすり、腰が引けたまま歩いている。

初めて少女の顔を見る事ができた。
(あれは確か・・3年C組の中嶋真智子・・)

成績は中の上といった所であろう。
真面目な生徒であった。
多胡の娘とは、違うクラスである。

(彼女が万引きするなんて・・・)
(人は見かけによらないものね・・)
(それを言ったら私もそうなんだけど・・)

中嶋は間違いなく自分の事を知っている。
由香里は何が何でも顔を見られる訳にはいかない。

二人が近づいてくると、由香里は書架の陰に身を小さく縮こまらせて顔を伏せた。
幸い、気付かれた様子もなく二人は部屋を出ていく。

しかし、ほっとする間もなかった。
これからが由香里の正念場である。

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